275発目  許さざるを得ない話。


ライナーノーツ

年の頃は20代だろう。

髪を一つにまとめている。

小柄な女性だ。

 

私には背を向けているので

顔は見えない。

 

JR新千歳空港駅の券売機の前で

私が切符を買おうとしたら

横から割り込んできた。

 

私は券売機の数メートル手前から

すでに千円札をポッケから出し

すぐにでも買える状態だった。

 

明らかに割り込みだ。

 

しかも割り込んだくせに

財布をバッグから出してもいない。

 

券売機の前でゴソゴソと

バッグの中をまさぐっている。

 

怒りの感情が沸点を迎える。

 

が、しかし、と思いとどまる。

 

角度を変えると割り込みではないかも

しれない。

 

 

レフト前に落ちたボールを

外野手が全速で前進しながら

キャッチした。

そのまま捕球した勢いで

バックホームする。

イチローさながらの返球だ。

私はそのボールをしっかりと

キャッチし三塁からホームを狙う

ランナーにタッチしようとする。

ランナーは私のタッチをかいくぐぐり

ホームベースへスライディングした。

私は絶対アウトだと確信したが

主審は判断を急がない。

クロスプレーには良くある話だ。

角度を変えてVTRで確認する。

結果はセーフ。

わずかにランナーの方が早かった。

 

って事もあるから感情を抑えた。

 

でも肝心のお金を用意してない。

 

 

『おい!割り込みするくらい

急いでるなら金くらい用意しとけよ!』

 

という内容のことを

極力丁寧に言ってみた。

 

審判の判断はセーフかもしれないが

私の感情的には割り込みなんだ!

 

小柄な女性は私を振り返り

何かを言い返そうとして口をつぐんだ。

 

小さな声で自分だけに言い聞かせるように

こう言った。

 

『やだ、かっこいい』

 

 

許す許す。

 

 

どうぞゆっくりご購入ください。

 

 

 

そうです。

 

ジマンデス

 

合掌

 

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